かつて「団地」が担ってきた賑わいを、今の時代に合った形で取り戻そうとしている場所があります。それが、横浜市緑区にある「竹山団地」です。2026年1月、Dチームでこの団地の視察に参加しました。竹山団地はbenten103/KANMATCHと同じく、神奈川県住宅供給公社が地域と連携して行うプロジェクトです。取り組みについては資料で知っていましたが、今回初めて訪問し、「支援」や「介護」の枠を超えた、住民と学生が共に育ち合う、エネルギーの循環を見る事ができました。

1. 始まりは、一人のリーダーの「信頼」から
竹山団地の変革が始まったのは2019年のこと。最初は、外部から入ってくる新しいプロジェクトに対し、少なからず不安を抱く住民もいたといいます。その空気を変えたのは、消防団出身の自治会長による力強い後押しだったそうです。「サッカーでチームプレイをしている人たちに悪い人はいない」。この言葉が、世代を超えた連携の呼び水となりました。物事が動き出す背景には、常に誰かの熱意と、それを信じて受け入れる器があることを、このエピソードは教えてくれます 。

竹山キッチン(神大喫茶)の食器棚の上に無造作に飾られた賞状類。このキッチンは寮生が食事をとる場所にもなっています。空き部屋が増えてしまった団地の上層階を神奈川大学サッカー部が寮として利活用しているのです。エレベーターが無い上層階もサッカー部員の筋力アップには好都合という、デメリットのアップサイクルです。
2. 「食」と「運動」がつなぐ、健やかな相関図
竹山団地が取り組むのは、「食・運動・コミュニティ」という3つの柱による地域循環です 。
- 食と農の循環: 団地内の休耕地を学生たちが耕し、収穫された野菜は「竹山キッチン」で調理されます。子ども料理教室の場にもなり、食を通じた自然な居場所が生まれています 。
- 運動と健康の循環: サッカー部の学生が、専門的な指導のもとでシニア向けの運動プログラムをサポートしています 。
ここで興味深いのは、この仕組みが全員にメリットをもたらしている点です。シニアは学生との交流に刺激を受けて健康になり、学生は敷地内で効率よくアルバイトをしながら、指導を通じて対話力や計画性を養っています 。

キッチンで提供されるスパイスマスターが作る本格的なカレーランチ。オプションで本場風のスパイスたっぷりチャイもいただける。食べ続けることでスパイスの効果が出て健康状態が好転した住民も居るそうです。実際にモニター住民を測定し、効能を数値化しているので説得力があります。
3. 「助ける人」と「助けられる人」の境界が曖昧になる
視察中に出会った経済学部3年生の学生トレーナーは、こう語ってくれました。「住民さんに向けたトレーニングメニューを考えることで企画力や計画性がアップしました。また、教えながら会話で培ったコミュニケーションスキルが、本業のサッカーの質も向上させています」と 。
ここでは、「若者が高齢者を助ける」という一方通行の関係ではありません。住民は施設を利用しながら学生を温かく気遣い、学生は住民をサポートしながら人生の先輩から様々なことを吸収する。こうした「互恵関係」こそが、コミュニティを長続きさせる秘訣なのかもしれません 。



おわりに:身近な人を幸せにする、その先に
神大サッカー部を率いる大森監督は、「人間性を育むことはライフスキルを向上させ、それが社会を前向きに進める基盤になる」と説きます 。身近な人を幸せにしようとする活動が、いつの間にか地域全体の活力を生み出していく。竹山団地で起きていたのは、そんな「等身大の幸せの連鎖」です。また、大森監督は今後の展望について質問されると、「やっとスタート地点、ここからどうやってこの団地を幸せにしていくか、その事しか考えていない」と話しされてました。熱い!地域と向き合って活動するには熱い想いは何よりのエネルギーになると再確認しました。

視察日: 2026年1月16日 執筆: 林 彩


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